序章
「ひらくPCバッグmini」を使い始めて、もうすぐ2ヶ月が経とうとしている。
時は2月如月、今年は暖冬と言われ続けて、北陸は冬だというのに雪もほとんどなく、季節を見紛うようなあたたかな福井の2月であったが、それでもストーブを毎日入れるほど、まだまだ寒い時期だった。
仕事で日中宅配便を受け取ることができない私は、重たいコートに身を包み、仕事を終えてそのまま佐川急便の営業所に向かい、大きなダンボール箱を受け取ってから、自宅に取って返したのだった。
「ひらくPCバッグmini」
それは私のような吹けば飛ぶような弱小ブロガーだけでなく、有名なブロガー諸氏やYoutuber、ノマドウォーカーに特に有名で、かつ大きな支持を得ていた、「ひらくPCバッグ」の新しいバージョンの呼び名である。
私は幸運にも初回入庫分をかろうじて手にすることができたが、なんとこの初回在庫を逃すと、約2ヶ月もの間、次の出荷がないという事態に発展していた。
この出来事は衝撃的であり、なんともラッキーな話ではあるが、だからこそこれから第2弾の出庫を今か今かと待ちわびている方たちのために、できるだけ多くの真実を伝えたい。
これは、ちゃぼPが感謝の気持ちを込めて振り返り綴る、真実の物語である。
第1章 出会いはオリーブグレーの風の中
私は「風」という言葉が好きだ。
このブログのタイトルになっている「風の羅針盤」にも「風」という文字を冠している。
ちなみに「風の羅針盤」を英訳すると、「Compass of winds.」となるが、私は敢えて「Destination of winds.」としている。
Destinationは「行く先」。風の行く先が、私たちの未来を指し示し、導いているように思うことがある。
私は風に導かれるがままに、このブログを今も書き綴っている気がしてならないのだ。
風というのは自由だ。
大空を自由に駆け抜け、天高く舞い、季節を運ぶ。
春は春の香りを運び、多くの花を咲かせる。
夏は草いきれと湿った風とともに、時に嵐となって暴れる。
秋は山の頂上から優しく山肌を下ってきては木々を黄金色に染め、冬は頬に刺さるほど凍てつく風となって吹き溜まる。
そんな冬の冷たい風の名残がこのダンボールの中にひとつつみ入って、私の手元に届く。
箱を開け、丁寧に梱包を解くと、ひとかたまりの風が私の脇を通り抜け、代わりに春色のオリーブグレーの風が私の前にはらりと姿を現した。
春らしく、愛らしい姿。
これが丹精込めてつくられた現代の理想のバッグだと言わんばかりに、いしたにさんをはじめとした多くのデザイナー、職人、ベトナムの縫製工場の人達の汗と涙の結晶が詰まっている。
そうだ。
私はなんとも言えない小さくこだわりを感じるこのバッグに、愛用するデジタル一眼レフカメラを入れて外に出たかった。
街にはシャッターチャンスが溢れている。
夜明けの白み出す空のもとに、頼りなく明滅する赤い光は極めて日本的で情緒がある。
やがて、夜が開け、街は活気に満ちてくる。
ひっきりなしに行き交う車。人それぞれに背負う期待と悩みが見せる表情。
それらが街角のショーウィンドウに映っては消える。
陽も傾きはじめる頃、空は朝とはまた違ったオレンジを纏い、夕餉の美味に舌鼓を打つその顔はどれも幸福そうだ。
予告
私はこのバッグに出会って、愛用のNikon D5500を収めることができるという、素晴らしい一つ目の真実を目の当たりにした。
ともすれば気にも止めずに過ぎ去ってゆく日常が、このバッグを肩にかけて歩くことによって、たくさんの素晴らしい瞬間をカメラに収めることができる。
このバッグとともに知り得た真実は、偶然にも私の前に舞い降りた。
それは音もなく静かに流れる、気まぐれの風のように。
そして、物語はまだまだ続く・・・