こんにちは。ちゃぼP(@chabo049)です。
今日はちょっと真面目な話題。
私のよく訪れるサイトのひとつに、「路線バス運転士こーくんのブログ」というブログがあります。
そんな中で、こんな記事がありました。
内容としては、JRの運転士が「停車中」に、スマホを見ていたところを乗客が通報したということに対して、この「こーくん」さんは本職の路線バスの運転士。その立場から、私見を述べています。
公共交通機関というのは、たくさんの人の命を預かりますので、当然規制されるべきものや、ルールも厳格に定められているのは皆さんもご存知のことと思います。記憶に新しいJR福知山線の脱線事故は、ほぼ運転士の過失と言われていますし、関越道での高速バスの側壁衝突事故などに至っては居眠り運転が原因です。
だから規制が厳しくなるのは当然と言えば当然なのですが、だからと言って「止まっている車内」で、スマホの画面を見るという行為が、それほど危険とは私には思えません。
この問題は非常に根深く、むしろ運転士のその行為そのものよりも、まさに「鬼の首でも取ったかのよう」に、乗客が所構わずスマホでその模様を盗み撮りし、公にしてしまうことの方が、社会的に問題な行為に思えてなりません。
本人はこれで、「社会正義のために通報してやったのだ!」と満足感に浸っているのでしょうが、本当にそれが正しいのでしょうか。
「正しい」ということは、いろいろな意味がある
「一般的に正しい事」というのはたくさんあります。
- 赤信号では進んではいけない
- 居眠り運転や酒を飲んで運転をしてはいけない
- 人に暴力を振るったりしてはいけない
- 人に迷惑をかけないように配慮しなくてはいけない
などなど。これらはいずれも正しく、人間として大人であれば社会生活を行う上で、当然意識して行動すべき内容です。
ですが、
- 電車やバスの運転士なら、乗務終了まではケータイの電源を切るべきだ!
- 市役所の職員なら、どれだけ暑くてもネクタイとスーツに身を包むべきだ!
- ハローワークで職業紹介してもらえないのは、職員の職務怠慢だ!
- 製品を買ったら使い方がわからない。使いやすいと思って買ったら使いにくかったらそれはメーカーの責任で返品すべきだ!
これって、社会正義でしょうか?
確かに、正しいこともあるでしょう。でもわざわざ声を荒げて相手に詰め寄って、社会が変わるとでも?世直しをしたつもりになっているとでも?
こういう人たちの行動は、はっきり言って自分の社会生活に対する不満のはけ口としてしか私の目には映りません。
その人がどんな正しいことを言っていたとしても。
正しいことというのは、
- しかるべき立場の人が
- しかるべき場所で
- しかるべき方法で
- しかるべきタイミングで
- 自分の言葉で訴えること
これが大前提だと思います。そうでなければせっかく正しいことを言っても、それはいたずらに相手を傷つけ、もしくは仮に相手側の行動が間違っていたとしても、それを是正するどころか、言った側を「クレーマー」として処理するだけです。
私も20代の頃から、ユーザーサポートのお仕事に関わってきましたが、以前はお客様は「神様」扱いでした。どんなお客様でもより良い商品の提供を期待している未来の顧客であり、時に理不尽とも思える申告をされてきたとしても、真摯に受け止め、製品やサービス改良の参考にするべきと言われてきました。
もはや、「お客様は神様」ではない
しかし、今はそんな風潮は変わってきています。
企業にとって、何某かの見返りや特別扱いを期待するためにそういうった「自己中心的」な申告をしてくる「お客様」が多くなってきたのです。
つまり「製品やサービス」の向上を期待しているのではなく、「自分の不満に感じた部分」を相手にぶつけ、「慰謝料」的な見返りを期待しているだけ、という輩が増えたのです。
当然、企業はそう言った「お客様」に対する対応は「謝罪」してもその場を収めるだけで何のメリットもありません。時には土下座させられたりまでして、お金を要求してきたりもしますが、その行為には自己中心的な欲求を満たす、もしくはストレス発散の道具としてしか相手を見ていませんから、企業はそう言った輩に対しては、「拒否」をするようになってきました。
これは「お客様は神様」という性善説に基づいたマーケティングから、性悪説に基づくマーケティングに変わったということを意味しているでしょう。
ちょっと前に、アメリカでドライブスルーのコーヒーショップかどこかで、熱いコーヒーを自分でこぼしたにも関わらず、その責任はコヒーショップであると裁判を起こして、そのコーヒーショップは莫大な慰謝料を支払ったという報道がありました。
これは対岸の火事ではなく、すでに日本でも起き始めていることなのです。もちろんまだ規模はそれほど大きくはありませんが。
サービス低下が招く、将来のビジネスの弱体化
これからの日本の社会は、ますます「お客様」に対して厳しい目を向けることになるでしょう。企業はユーザーに対して、明らかに警戒を強めています。
そんな企業の姿勢は、確かに自己防衛のために止むを得ないのかもしれません。しかし防衛ばかりしていて、新しいサービスやイノベーションはなかなか生まれないでしょう。
まして、リスクをより大きくしてしまうような新しい事業には踏み出しにくくなるでしょう。
そうしているうちに、日本の企業は外国の企業のイノベーションに飲まれていくことを、私は危惧しています。
ジャスティスハラスメント。
それは日本の未来をも萎縮させかねない、大きな問題なのです。