前回、前々回とMacBookにおけるバッテリーの持ち時間と、モバイルバッテリー使用における充電時間について、検証を実施した。
MacBook 12inch Retinaのバッテリーの持ち時間
モバイルバッテリーでゼロから充電した結果
今回は、第三弾として、バッテリー切れを起こしかけた状態から、通常使用を継続した状態でモバイルバッテリーを使用して充電ができるか?という問題に立ち向かうべく、作業を進めたい・・・
と思ったのだが、その前にきちんと明らかにしておきたいことがある。
ああ、とても大切なことだ。それは「愛情」と「友情」の違いと同じくらい重要なことだ。
その重要なこととは・・・
「給電」と「充電」の違いについてである。
消費電力が大きい機器ほど充電のハードルは高い
もちろん「給電」と「充電」の違いくらい知っている、という人は華麗にスルーして欲しい!本文は長いが大したことは書いてないから!(笑)
例えば、iPhone。iPhoneをモバイルバッテリーにつなげば、大概のバッテリーは「充電」を行ってくれる。
そもそもiPhoneに標準で付属しているあの小さくて四角い充電器、ホワイトキューブ野郎はとてもコンパクトでイケメン君であるが、給電能力はそれほど高いものではない。
これが噂のホワイトキューブ野郎(別名iPhoneのACアダプタ)。最初に見た時はその小ささにビックリ!
ちょっと見にくいが、「Output:5V1A」の文字が記載されているのがわかる。なぜ、5Vなのかというと、USB規格の上限が5Vと決まっているからだ
写真にあるように、このiPhone用のACアダプタの裏面に「Output:5V 1A」と記載されている。
これを消費電力に換算すると「5V×1A=5W」で5Wの給電能力を有することがわかる。
つまり、iPhoneのような携帯端末は、よほど負荷のかかる処理を継続して行わない限り、「5W」の充電器で充電できるということ。
ちなみに、身の回りにある電化製品の一般的な消費電力の目安を示す一覧があったので、参考にしていただくとイメージしやすいかもしれない。
これは蛇足だけれど、よく見かけるノートパソコンなどの電化製品に付属する黒いACアダプタには「INPUT:100-240V」と書かれている製品も多い。これは海外では200Vを超えるような電圧で電力供給されているところも多いため、それに対応させたACアダプタにこういった記載がある。これには、部品の共通化を行ってコストダウンを行うメーカーの事情もあるんじゃないかと勝手に想像している。違っていたらゴメンなさい。
東芝DynabookのACアダプタ。日本国内は100V電源なのだが、ACアダプタは240Vまで対応。
但し、気をつけなければいけないのは、日本国内向けの電源コードは2極の細めのケーブルが多いが、これは日本国内の電圧にしか対応していない場合が多い。つまりACアダプタが海外仕様に対応していても、それにつながるコードが対応していないというケースだ。
一般的に電圧が高ければ、当然それを流すだけの容量(太さ)に耐えうるケーブルが必要になる。もし能力が不足していると、加熱を起こして最悪の場合発煙、発火を起こして火災に至る危険が!
もし海外に日本で購入した電化製品を持って行く場合は、安易にACアダプタが対応しているから大丈夫と思わずに、メーカーなどに確認してから持ち出すことをお勧めしたい。
話を元に戻そう。
つまり、スマートデバイスはそれほど電力を消費しないということだ。だからこそあの小さな四角いイケメン野郎(別名iPhoneのACアダプタ、、しつこい)でも充電が可能なわけだ。
パソコンはスマホに比べて消費電力が高い
では、パソコンはどうだろう。例えば、MacBook Pro 15inchの消費電力を見てみよう。
このように、ACアダプタは85Wの給電能力を有している。つまり、パソコン本体はそれほどの電力を消費するということであり、同時にそれなりのバッテリーを搭載しているということになる。
MacBook Pro 15inchは画面も大きく、Retinaであり、CPUやメモリもパフォーマンスの高いスペックになるため、多くの電力を消費するというわけだ。
部長ナビ氏が購入した「Hyper Juice」という製品はこういったハイパフォーマンス機にさえ電力供給を行える特別なバッテリーだということなのだ。
続いて、同じくAppleのMacBook 12inch Retinaの仕様を見てみよう。
ACアダプタの電力供給能力は「29W」とある。先ほどのProと比較すると、数値上実に約3倍の開きがある。つまり、それほどに省電力であり、裏返すとパフォーマンスにも差があるということだ。
MacBook Proは動画編集もできるほどのスペックだが、MacBook 12inch Retinaはそれには向かない。不適だ。私は動画はやらないので、スペックに不満がないけれど、パソコンの使い道については人それぞれなので、よーく検討して欲しいところ。
高速で充電できるUSB-PD規格
2015年、USB Power Deliveryという新しい規格が普及し始めた。これは、これまでUSBには5Vの電圧でしか電気を流せなかったものを、12Vや20Vといったより大きな電圧で電気を流し、最大100Wの電力を供給することが可能な新しい規格のことだ。
参考
これまで5Vでチョロチョロと充電していたものを、一気に電圧を上げて効率よく電気を流せるようにしたということで、MacBook 12inch Retinaはこれを採用している。
付属のACアダプタは当然これに対応しているので、急速充電が可能だ。
MacBook 12inch RetinaのACアダプタには「USB PD」の文字が表示されている。出力は14.5V2Aなので、14.5V×2A=29Wとなる。
Ankerのモバイルバッテリー「PoweCore 10400」には「Output:5V3A」と表示がある。つまり最大出力は、5V×3A=15Wとなり、USB-PD準拠の標準ACアダプタのおよそ半分の出力となる。
私の知る限り、まだモバイルバッテリーと呼ばれる製品の中にこれに対応した製品がない。例のHyper Juiceからは対応済みのケーブルも発売されているようだが、今まで私たちが気軽に購入してきた軽量小型のモバイルバッテリーには存在しない。すでにMacBook 12inch Retinaが発売されて半年以上経っているので、そろそろ出て欲しいと思うところだが、流す電圧が高くなるので、保安面でクリアすべき点が多いと推測される。
とはいえ、時間の問題と思われるので、今後に期待したいところ。
そしてこのMacBook 12inch Retina。もちろん5Vの充電にも対応している。これは素直に嬉しい点で、通常のUSB5Vの電圧でも、アンペア数さえ確保できれば、USB機器から充電可能なのだ。
給電モードと充電モード
パソコンの画面右上のバッテリーマークを見て欲しい。付属のACアダプタを繋いで充電している時は、このような表示になっていると思う。
バッテリーアイコンは、白い背景に黒い雷マークが表示されている。これは充電モードになっているということを意味していて、つまりある程度の負荷をかけた状態(Youtubeを再生したり、エンコードや動画編集をしたり、ゲームを行ったりという場合)でも、USB-PDモードで充電を行っているので、パソコンが消費する電力を上回って電力を供給でき、充電モードが継続される。
対して、モバイルバッテリーはUSB-PD非対応。なので、おとなしく使っている時はパソコンの消費電力が低いので、充電モードになるが、重い作業をしたり、メモリを大きく使うような(重たいアプリはメモリ(RAM)を多く使う。メモリは電力が供給されて動作するので、使用量が多ければそれだけ電気を食う)処理をすれば途端にモバイルバッテリーからの電力供給量を上回り、充電はできなくなる。
つまり、この状態が「給電モード」だ。
この状態では下の図のように、
充電できませんと表示され、電池マークが黒く塗りつぶされた状態になる。
パソコンの電力使用量が、アダプタからの供給量を上回っているわけだから、当然バッテリーは少しずつ減っていく。
供給量はゼロではないので、減り方は緩やかにはなるが、そのままだと決して増えることはない。
給電状態の時は充電残量が徐々に減ってゆくが、負荷を減らすと充電状態に切り替わる。
モバイルバッテリーから充電する場合は、5V2.28A、約13W程度で出力しているようだ
MacBook 12inch Retinaの充電に関する情報が少ない
MacBook 12inch Retinaを購入するにあたって、非常に興味があり、且つ知りたかった情報はこの充電に関する部分だった。
いくつかのブログなどでレビュー記事が出ていたものの、例えば、A社のモバイルバッテリーでは充電できるが、B社のものではNG、といった記事があったかと思えば、別の記事では同じバッテリーでNGと書いてあったりした。
私が知りたかった情報は、
- MacBook 12inch Retinaをそもそも充電するために必要なバッテリー側のスペック
- パソコン使用中にバッテリーを接続して充電できるのか
- できるとするなら、どのような条件がつくのか
ということだった。つまり定量的な情報が欲しかった。
特に3.については、とどのつまり充電できるか否かはパソコン側でどれだけの処理を行うかということにかかっている、ということが、今回パソコンを手にして初めてわかったというわけだ。
同じように購入検討をしている方にとって、モバイル用途で考えている人も多いはず。外で頻繁に作業をする前提のユーザーも多いと思うし、モバイルバッテリーでの充電可否はこの機種を選ぶ際の重要なファクターにもなると思うので、こんな記事でも皆さんの役に立ったらと思った次第。
さて、長くなってしまったので、次回、いよいよその「パソコンを使いながら、充電ができるか、そしてできるのならどれくらい稼働時間を確保できるか」という点についてまとめたいと思うので、もう少し待って欲しい!