【連載】ひらくPCバッグminiが教えてくれた新世界〜(2)窓

第2章 偶然と必然

ひとつの出会いが、思いもよらない出来事を誘発することがある。

この世の中は、実は見えない力に支配されているのではないかと思うことがある。

他人から見れば単なる偶然。

しかし、偶然で片付けられない不思議なことを目の当たりにすると、それは必然じゃないかと思ってしまう。

 

このバッグの素晴らしいところの一つは、様々な物が効率的に収納でき、しかもそれを簡単に取り出して使うことができる点だ。

ひらくPCバッグmini01

 

私の大切な相棒、MacBook 12インチ。

これまで私はパソコンはいつも四角いバッグに入れて持ち運んでいた。

四角いバッグはテーブルの上に置くには大きすぎる。

だからいつも足元に置いていた。

そういうものだと思っていた。

 

だが、このバッグと出会ってから、その考えは一変した。

足元に置いたバッグから、パソコンを取り出す場面は限られる。

テーブルがあり、スペースがあり、時間があるときにしか億劫で取り出す気になれなかった。

 

だが、こんな高性能で美しいパソコンなら、もっと自由に、いつでもどこでも使いたい。

私は潜在的にいつもそんなことを考えていたのかもしれない。

 

絵描きがキャンバスとイーゼルを前に心に浮かぶ風景を筆に乗せるように。

このバッグをテーブルの上に置いてフラップを開けば、途端にパソコンを使って思いのストーリーをキーボードに乗せて描くことができるのだ。

 

ひらくPCバッグmini03

 

ケーブルだってホラ、まるでバッグから充電しているかのように、自然にマッチしている。

通信だって、モバイルルータさえあれば、何の心配もいらない。

こんな世界があるなんて、僕は知らなかったよ。

 

Yellowknife Lightning & microUSB08

 

モバイルルータがまるでこのバッグに合わせて作られているかように、見事にフィットしている。

そして、ここから伸びたケーブルを外まで伸ばしてやるんだ。

 

Yellowknife Lightning & microUSB09

 

ホラ、ここにちゃんと穴が開けてあるだろう?

こんなバッグが今まであったかい?

こんな小さな穴が、僕たちを幸せにするなんて想像もできなかったよ。

 

Yellowknife Lightning & microUSB11

 

僕のiPhoneだって、もう電池切れの心配がないんだ。

バッグひとつがこんなに僕たちの生活を変えてしまうんだ。

 

SE-5000HR01

 

このバッグとの出会いは、偶然なのか、それとも必然か。

それはわからないけれど、たったひとつだけわかることがある。

ひらくPCバッグminiをテーブルの上に置いた瞬間に、そこに「窓」が生まれて、風景が生まれるんだ。

私は今その「風景」を見ている。

そして、その風景を見つめながら、ひたすらキーボードを叩き続けている気がするのだ。

予告

屋内で見せるこのバッグの魅力は驚くほど機能的だ。

だが、私はこのバッグを持ち出して、屋外で使う楽しさをもっと知りたかった。

「さあ、外に出てみるかい?」

目の前のバッグは、そう問いかけるように私を外へと誘う・・・

【連載】ひらくPCバッグminiが教えてくれた新世界〜真実の物語

序章

「ひらくPCバッグmini」を使い始めて、もうすぐ2ヶ月が経とうとしている。

時は2月如月、今年は暖冬と言われ続けて、北陸は冬だというのに雪もほとんどなく、季節を見紛うようなあたたかな福井の2月であったが、それでもストーブを毎日入れるほど、まだまだ寒い時期だった。

仕事で日中宅配便を受け取ることができない私は、重たいコートに身を包み、仕事を終えてそのまま佐川急便の営業所に向かい、大きなダンボール箱を受け取ってから、自宅に取って返したのだった。

 

「ひらくPCバッグmini」

 

それは私のような吹けば飛ぶような弱小ブロガーだけでなく、有名なブロガー諸氏やYoutuber、ノマドウォーカーに特に有名で、かつ大きな支持を得ていた、「ひらくPCバッグ」の新しいバージョンの呼び名である。

私は幸運にも初回入庫分をかろうじて手にすることができたが、なんとこの初回在庫を逃すと、約2ヶ月もの間、次の出荷がないという事態に発展していた。

この出来事は衝撃的であり、なんともラッキーな話ではあるが、だからこそこれから第2弾の出庫を今か今かと待ちわびている方たちのために、できるだけ多くの真実を伝えたい。

これは、ちゃぼPが感謝の気持ちを込めて振り返り綴る、真実の物語である。

第1章 出会いはオリーブグレーの風の中

私は「風」という言葉が好きだ。

このブログのタイトルになっている「風の羅針盤」にも「風」という文字を冠している。

ちなみに「風の羅針盤」を英訳すると、「Compass of winds.」となるが、私は敢えて「Destination of winds.」としている。

Destinationは「行く先」。風の行く先が、私たちの未来を指し示し、導いているように思うことがある。

私は風に導かれるがままに、このブログを今も書き綴っている気がしてならないのだ。

 

風

風というのは自由だ。

大空を自由に駆け抜け、天高く舞い、季節を運ぶ。

春は春の香りを運び、多くの花を咲かせる。

夏は草いきれと湿った風とともに、時に嵐となって暴れる。

秋は山の頂上から優しく山肌を下ってきては木々を黄金色に染め、冬は頬に刺さるほど凍てつく風となって吹き溜まる。

 

そんな冬の冷たい風の名残がこのダンボールの中にひとつつみ入って、私の手元に届く。

箱を開け、丁寧に梱包を解くと、ひとかたまりの風が私の脇を通り抜け、代わりに春色のオリーブグレーの風が私の前にはらりと姿を現した。

 

ひらくPCバッグmini01

 

春らしく、愛らしい姿。

これが丹精込めてつくられた現代の理想のバッグだと言わんばかりに、いしたにさんをはじめとした多くのデザイナー、職人、ベトナムの縫製工場の人達の汗と涙の結晶が詰まっている。

【レビュー】ひらくPCバッグminiにMacBookとデジタル一眼レフを入れて持ち歩こう!

そうだ。

私はなんとも言えない小さくこだわりを感じるこのバッグに、愛用するデジタル一眼レフカメラを入れて外に出たかった。

街にはシャッターチャンスが溢れている。

夜明けの白み出す空のもとに、頼りなく明滅する赤い光は極めて日本的で情緒がある。

 

ひらくPCバッグminiが教えてくれた新世界03

 

やがて、夜が開け、街は活気に満ちてくる。

ひっきりなしに行き交う車。人それぞれに背負う期待と悩みが見せる表情。

それらが街角のショーウィンドウに映っては消える。

陽も傾きはじめる頃、空は朝とはまた違ったオレンジを纏い、夕餉の美味に舌鼓を打つその顔はどれも幸福そうだ。

 

ひらくPCバッグminiが教えてくれた新世界01

 

ひらくPCバッグminiが教えてくれた新世界02

予告

私はこのバッグに出会って、愛用のNikon D5500を収めることができるという、素晴らしい一つ目の真実を目の当たりにした。

ともすれば気にも止めずに過ぎ去ってゆく日常が、このバッグを肩にかけて歩くことによって、たくさんの素晴らしい瞬間をカメラに収めることができる。

ひらくPCバッグmini21

このバッグとともに知り得た真実は、偶然にも私の前に舞い降りた。

それは音もなく静かに流れる、気まぐれの風のように。

そして、物語はまだまだ続く・・・

【連載】俺の相棒(終)~夢の続き

それぞれの思い

わたしの名前はレティーナ。

ご主人のところに来て、もうすぐ2ヶ月。早いものです。

一緒に生活をしてみて、いろいろなことがわかってきました。

 

毎日、わたしはご主人とともに行動しています。

彼は、毎朝充電の終わったわたしをカバンに入れ、お仕事に行きます。

残念ながら、お仕事中わたしを使うことはできないようですが、嬉しいことに、お仕事が終わったら、彼は真っ先にわたしを開き、ひたすらブログを書きます。

内容が思いつかない時は、何かブツブツと独り言を云っていますが、そんな時はあえて聞こえないふりをしています。

そして、せめてもの癒しにと、スクリーンセーバーという機能を使って、わたしに保存されている数々の天体や、風景の写真を見せるのです。

 

—–

あれからもうすぐ2ヶ月。

我が家にMacBookがやってきてからあっという間に時間が過ぎた。

MacBookを使ってみて、改めてこのコンピュータの優れたところに気づかされる。

 

キーボードのタッチは軽やかに、トラックパッドの動きは滑らかに。

彼女は思った通りの動きを実現してくれる。

私は彼女のことを、親しみを込めて「レティーナ」と呼んでいる。

彼女はコンピュータだから人間のような意志や感情はないが、本当はあるのではないかと錯覚してしまうほど、私の動きに実によく反応してくれる。

 

その上、バッテリーは長持ちだし、その軽さゆえに気軽に外にも持ち出すことができる。

デジタルカメラとの連携もとてもスムーズで、カメラをケーブルでつないだ瞬間に写真がクラウドに同期されてゆく。

何においても、使い勝手は最高の相棒だ。

 

だが、私の心には、どうしても引っかかっていることがある。

それはあの日見た夢の結末。

なぜ、あの時、あんな夢を見たのか。

そして私を手招きしたのは、本当に母だったのか。

あれ以来、毎晩のように夢の続きを見たいと思いながら床につき、次の朝にそれが叶わなかったことを知る。

 

—–

最近、ご主人は毎朝、少し悲しげな表情を浮かべます。

毎朝充電ケーブルを抜き、わたしをカバンに詰め込む時、少しだけその悲しさがわたしに伝わってきます。

あなたがなぜ悲しくなるのか、理由はわかっています。

ごめんなさい。わたしにもう少し力があれば、あの夢の続きを見せてあげられるのですが。

そして、わたしに感情がないと思っているあなたに、この気持ちをどうにかして伝えたいと思っています。

今夜、あなたにもう一度、気持ちを伝えられるか頑張ってみます。

 

—–

雪の日

福井の今日の天候は、雪。

昼過ぎから時折強く降り、夜になってその勢いはますます強くなっていく。

辺りの音が雪に吸収され、いつもよりしんと静まり返っている。

 

今日はたくさん写真を撮ってきた。

雪化粧を始めた私の住む周辺の街並みも、いろいろな姿を見せてくれる。

福井の雪景色

夢の途中

家路へ送る駅

私はこれらをレティーナに取り込み、若干の加工をして、ブログへアップした。

素人の写真だけれど、これらはある意味私の記録写真でもある。

 

とても充実した気分だ。

レティーナを、普段はデスクの上で充電するが、今日は不思議な充実感の中、相棒を枕元に置いて充電を開始した。

私は雪がしんしんと降る福井で、レティーナの画面を閉じ、眠りについたのだった。

 

明日は、いい日になるだろう。

なんとなく、そんな気がした。

エピローグ

顔を洗い、身支度を整える。

いつもと同じようにコーヒーを入れて、出勤の準備だ。

ふと、レティーナを手に取ると、電源が切れていなかった。

 

「なぜだろう?」

 

私は朝の忙しない時間の中で、画面を開いてみた。

画面を開くとそこには・・・

白いAppleのマークが、しばらくの間表示され、なぜだか消えようとしなかった。

 

外には昨夜降り積もったたくさんの雪が積もっている。

ふと窓の外を見上げると、雪雲の切れ間から、綺麗な朝焼けが見えた。

私は急いでカメラを取り出して、1枚だけ、撮影した。

朝焼け

仕事から帰宅した後、その写真をレティーナへ取り込む。

 

そして写真を見てハッとした。

それは、紛れもなくあの夢の中の風景と同じだった。

場所も時間も、すべて異なる風景のはずなのに、そこに映る綺麗な朝焼けの紅は、母と見た風景と同じだった。

 

私は涙が溢れた。

やっと、私は母と巡り会えた気がした。

 

涙に滲む画面を見ながら、レティーナの画面に反射して映る私の顔が、ほんの少しだけ優しく笑っているように見えた。

そして、それを映すレティーナがまるで感情を持っているかのように、愛おしい存在に思えた。

 

「君が私にこの朝焼けを見せてくれたのかい?」

私は彼女に向かって問いかけた。

彼女は何も言わなかった。

 

「これから、たくさんの思い出を一緒に作ってゆこう」

私は彼女にもう一度、問いかけた。

彼女は、少しだけ、画面が明るくして見せたような気がした。

(完)

御礼

最後まで連載「俺の相棒」シリーズをお読みいただき、誠にありがとうございました。

私もこのような展開になるとは最初は思っていませんでしたが、お楽しみいただけましたでしょうか。

書いている私も、まったく先の読めない展開に、ドキドキの連続だったのは内緒ですが、このような機会を与えてくださった部長ナビさんをはじめ、アクセスいただきました皆様には深く御礼申し上げます。

次回、いつになるかはわかりませんが、もし可能であれば、また連載シリーズを続けて行きたいと思っております。

是非その時までお楽しみにしていただけると幸いです。

【連載】俺の相棒(6)~告白

Memory

「わたしの名前はApple MacBook 12inch。シリアルナンバー C02PT7xxxxxx」。

びっくりさせたのなら、ごめんなさい。

わたしには、最初に目を開けたら、必ずご主人に自己紹介するように、プログラムされているのです。

 

ご主人は、わたしのことを、親しみを込めて、「レティーナ」と呼びます。

彼は、わたしにとても優しくしてくれます。

画面やキーボードに指紋が付いたら、清潔なクロスで綺麗に拭き取ってくれますし、すごくたくさんの仕事をご依頼される時も、きちんとモバイルバッテリーでエネルギー補給をしてくれます。

MacBook 12インチを使いながら、モバイルバッテリーで充電した結果

 

わたしのご主人は、いわゆるブロガーというふうに世間では言われているようで、特に最近になって親しくしているのが、盛岡の学校の先生のようです。

わたしを通して、毎日のようにSNSでメッセージの交換をしています。

ご主人が先日わたしのことを紹介したブログの記事を、その先生はとっても褒めてくださいました。

【レビュー】Surface3とMacBook 12inch Retina、どっちを選ぶ?

http://nabi1080.com/review/macreview/43582

この先生のところでは、わたしの兄弟たちが多く活躍してくれているようで、とっても嬉しいです。

MacBook Proや、iPad、iPhone、それにApple Watch。

どれもわたしを産んでくれたAppleのエンジニアたちが心を込めて作り出した作品です。

故郷

わたしの故郷はAppleというところです。

そこから生まれたわたしの兄弟たちもたくさんいます。

iPhone、MacBook Pro、MacBook Air、iMac、Mac Pro、iPad、Apple Watch・・・

この他にも現役を退いた先輩たちも入れると、とてもたくさんの素晴らしいコンピュータたちがここから生まれました。

 

わたしは、そんな故郷がとても大好きです。

仲間が乱暴に扱われたりするととても悲しくなります。

ですから、どうか皆さん、もし可能でしたら、できるだけ丁寧に私たちを扱ってほしいです。

これはわたしからのお願いです。

 

わたしはご主人のところにやってきてから、お友達ができました。

本格的なデジタルカメラというもので、Nikonという名前が書いてあります。

AppleのiPhoneやiPadにも、同じデジタルカメラの機能が付いていますが、この大きなカメラはとても素晴らしい写真をわたしに送ってきます。

それらはご主人が心を込めて撮影した写真たちです。わたしもとても大好きです。

ですから、大切にわたしの中に保管しています。

 

ご主人はわたしを通して、今日もブログを書いています。

ご主人がわたしに与えたお仕事で、余計な心配を抱えることのないように、一生懸命頑張らなければと思っていますが、わたしはコンピュータですから、いつかはお別れするときが来てしまうのがとても悲しいです。

でも、それは、今は考えずにおきます。

悲しい顔は、「レティーナ」の画面にふさわしくありませんから。

 

そうそう、最後にもうひとつ。

ご主人さま、宅配便で運ばれてきたわたしを、最初に受け取る時に夢を見ていましたよね?

その中で、あなたを導いていたのは、あなたのお母さまでしたか?

わたしは、あなたのお母さまの顔がわかりませんので、顔はうまく描けなかったのです。

ごめんなさい。

 

でもきっと、あなたの優しさは、ちゃんとお母さまに届いています。

安心してくださいね。

次回予告

まさかのMacBookからの告白。

あの夢の正体は彼女「レティーナ」の創作だったのか!?

主人ちゃぼPは、彼女の告白にまだ気付いていない。

彼女の告白をどうやって目にし、受け入れて行くのか・・・

次回予告タイトル、「夢の続き」に乞うご期待!!

【連載】俺の相棒(5)~夢と現実の間に

遥かなる夢の面影

低い潅木が辺りを埋め尽くす。

気がつくと私は朝靄が立ち込める湿地のようなところにいて、足元には潅木の間に細く長い木道が伸びており、その先は朝靄の中に消えていてよく見えない。

何かに誘われるように、木道の上をゆっくりと歩き出すと、ところどころに小川が流れていて、その水面は鏡のように穏やかだ。

遥かなる夢の面影

Photo by (c)Tomo.Yun

昔、この風景をどこかで見たことがある。

そう思いながら歩いていくと、朝靄の中で手招きをする人がいる。

顔はよく見えないが、私の名を呼び、手招きするその姿は、多分母だ。

そうだ、ここは家族で子供の頃に訪れた尾瀬の景色だ。

そう思ったら、なぜだか急に嬉しくなって、一目散に手招きをする母の方へ駆け寄った・・・

 

「宅配便です」

 

インターホン越しのリアルな声で私はベッドの上で目を覚ます。

私は夢を見ていた。

とても懐かしい、決して戻ることのない子供の頃の夢を。

 

寝ぼけ眼のまま玄関先で荷物を受け取り、そばに置いた。

外はすでにもう昼前。

昨晩は更新するつもりだったブログの内容について、あーでもない、こーでもないと考えを巡らせた挙句、結局記事を投稿しないまま寝てしまった。

 

今日は休日。

忙しない平日の朝と違い、いつもよりゆっくりと時間が流れる。

私は、顔を洗い、コーヒーを入れ、トーストを焼いた。

 

テレビを見ながら、焼いたトーストを頬張る。

文字どおり、「雲が晴れた」ように、外は良い天気だ。

私の気分は明るく、清々しく、軽やかだ。

 

そして・・・

先ほど受け取った宅配便の荷物。

三日前に悩んだ末に出た結論。

「心の欲するままに」新たに迎え入れることにした「新しい相棒」が中に入っているはずだ。

 

「さてと」

私は声に出して立ち上がり、先ほどの荷物を手元に引き寄せ、梱包を解き始めた。

箱の中身

そこには白い箱と、そこに描かれる特徴的な本体の写真がある。

まるで貴重品を扱うような手つきで箱を開け、丁寧に中身を取り出す。

 

MacBook 12inch Retina スペースグレイ

 

「こんにちは。これからどうぞよろしくね。」

彼女はそんな風に話しかけてくれた気がした。

 

窓の外のいつもと変わらぬ風景は、すでに陽も高くなり、一層明るさを増していた。

真冬だというのに、ぐんぐんと暖かくなってゆく。

 

「こちらこそ、よろしく。」

私はそう言って、USB-Cケーブルをそっと彼女のコネクターに挿し、最初の充電を始めた。

次回予告

遂に、MacBook 12inch Retinaと対面したちゃぼP。

彼は小春日和の陽気の中、高ぶる感情を抑えながらも新しい相棒との未来に期待を隠しきれないでいる。

だが、今朝見た夢は途中で終わっている。あれはただの記憶の気まぐれからなる夢だったのか?

物語はまだ終わらない。次なる彼に待ち受ける未来は一体何なのか?

因縁と宿命に導かれるかのように展開する彼の未来を、どうか次回も見届けて欲しい!!

【連載】俺の相棒(4)~ベテルギウスの赤い光

葛藤

指先が震えている。

まるで何かから逃れるように帰ってきた私は、気持ちを落ち着かせるために一杯のコーヒーを淹れた。

キリマンジャロの豊潤な香りが、私の高ぶる感情をさすってくれるかのように、鼻腔の中を駆け抜ける。

 

誰かにこの気持ちを打ち明けるべきか、否か。

誰かに打ち明けるとすれば、盛岡で教鞭をとる彼だ。

だが、彼は迷いもなく云うだろう。

 

「ブロガーなら、迷う意味がない」と。

 

そんなことは言うまでもなく分かる。

人間というものは、正しいことや間違っていることは誰でもわかるのだ。

どの道を選択するか。

それが、その人の個性であり、矛盾であり、過ちであり、人生だ。

その選択こそが、それぞれの別の未来を創り上げる。

 

Surface3を目の前に置き、今更ながら「ただいま」と云った。

彼は、いつも通りログイン画面を表示したまま、「おかえり、どうだった?」と云った気がした。

 

返す言葉がない。

 

たかがパソコンだ。道具じゃないか。

何を使おうが、人をだますわけじゃない。

だが、言葉を返せなかった。

 

ゆっくりとパスワードを入力して、見慣れたデスクトップを表示させる。

ブラウザを起動し、世の中のニュースや、例の教師のブログを眺めたりして時間が経つのをゆっくりと噛みしめた。

世の中は普通に回っている。いつも通りだ。

 

その中で、私だけが動揺している。

ああ、何故出かけてしまったんだろう。

そして、何故出会ってしまったんだろう・・・

 

子供がイヤイヤをするように、私は目を閉じ頭を振ってパソコンを閉じた。

これ以上、今考えても答えは出ないと思えたのだ。

ひとすじのひかり

ソファーで横になってひと眠りし、支度をしてスポーツジムへ出かけた。

こんな時は体を動かすに限る。

ダンベルを揚げ、ランニングマシンで息が切れるほど、走った。

 

おもては先ほどまで冬の嵐に包まれていたが、束の間の冬の星空が覗いている。

北陸の空は、こんなことがよくある。

ふと窓の外を見ると、オリオン座が煌々と光っている。

なんでも、オリオン座で赤く輝くベテルギウスは、星の寿命なんだと云う話を聞いたことがある。

600光年も離れているから、今見ている光は、実は平安時代頃の光で、すでに爆発して星自体が無くなっているかもしれないと。

壮大な話だ、儚い話だ、などという他愛もないことをぼんやりと考えながら、走った。

ベテルギウス

そう言えば昔、星の写真を撮りたくて、寒空の下で天体撮影を行ったものだ。

もし、今あの星がすでに無くなっているのだとすると、実体のないものを一生懸命追いかけていたということか・・・

だが、もし仮にわれわれの住む地球のような星が他にあったとして、遠くから地球を見ていたら、その地球は果たしていつごろの地球の姿なんだろう。

 

実体。

それは目の前にあるようで、実は存在しないのかもしれない。

見て、触って感じ、「存在する」と「証明したこと」にしているが、とどのつまり、時間というものも、空間というものも、この掌でつかむことすらできないでいる。

それが人間の限界なのだ。

私は、はたと我に返り、ランニングマシンの「停止」ボタンを押した。

 

所詮、人間は考えることしかできない生き物だ。

神から絶対的な正解を常に与えられ、それに沿って生きることなどできない。

心の欲するままに、生きること。

それが結局は自分の幸せに繋がり、自分が幸せになることで、人も幸せにできる。

 

そうなのだ。

人間など、それくらいのことしかできんのだ。

ほんの少し、勇気が生まれた。

次回予告

オリオン座を眺めながら何かを感じ取ったちゃぼP。

先ほどまで悩みの分だけ重くなっていた彼のクルマは、少しだけ軽くなりスピードが上がる。

いよいよ感動クライマックスの幕開け、自分を信じて歩き始めるちゃぼPの第一歩に、乞うご期待!!

【連載】俺の相棒(3)~心、此処にあらず

誘い

今年の福井は雪が少ない。

例年と比べると温暖で、冬の嵐もどこかへ行ってしまったのではないかと錯覚するようだ。

 

Surface3。

そんな福井で、私は此奴にSIMカードを入れ、バリバリと使い始めた。

そう、彼は私の新しい相棒。

 

時にはPC、時にはタブレット。

まるでスーツとカジュアルをスマートに着こなす、オトナのオトコそのもの。

その所作は、繊細で確実だ。

 

そんな彼に、幽かな不満もなかった。

ないつもりだった。

 

私は部長ナビという、遠く離れた北国の学校教師とひょんなことから知り合いとなり、

得意のワードプレスのサポートを行うことになった。

 

彼は、Macを使っていた。

MacBook Pro 15inch Retinaモデル。

こいつはAppleの出すノートブックコンピュータでは最強の機体だ。

 

私にはすでに新しい相棒がいる。

彼はよく働いてくれるし、不満もない。

それに、Windowsに慣れ親しんだ私は、最初からMacBookは相棒となりうる対象から外していた。

だが、そんなことは御構い無しに、その北国の教師は毎日のようにMacBookの素晴らしさを自分のブログに綴っている。

 

そんなにいいものなのだろうか。

私の心は幽かに揺れた。

だが、こんなに機動性に優れたSurfaceよりも、素晴らしいという彼の言葉は、俄かに信じがたい。

そんな私の思いは、ただし、確信ではなく、ゆらゆらと風に揺らめく蛍のように頼りない。

 

「とりあえず、一度会ってくるよ」

 

私は、相棒であるSurface3にそう言い置き、電気店へと足を運ぶことにした。

頼りない、私の気持ちを、確信に変えるために。

心、此処にあらず

吹き荒れる、風

福井では、MacBookなど置かれているような店舗は数少ない。

都会ではないから、そもそも需要がないのだ。

そんな中、一抹の不安を抱えた私はMacBookを取り扱う電気店へと降り立った。

 

入り口の方から順番にパソコンを眺めてゆく。

私は最初からMacBookに触れるのが怖かった。

その気持ちは、まるでひたすら片思いを続ける女性と対面して、愛想笑いを浮かべられるのを恐れているかのようだった。

気後れをしながらMacBookコーナーたどり着いた私は、恐る恐るMacBookに手を触れた。

 

その瞬間。

私の体は電気に打たれたように、硬直した。

なんだ、このタッチ感は!

何なんだ、この美しさは!

いっぺんに私は「彼女」の虜になってしまった。

 

性能とか、拡張性とか、もうそんなものはどうでもよかった。

今まで散々不便だ、使いにくい、スペックが足りない、電池が持たない・・

歴代のパソコン達にそんな難癖をつけていた私は、自らの不明を恥じた。

 

いけない。

こんなに鼓動が高まった状態で、これ以上彼女に触れたら、私の心は溶けてしまう。

私は突然に怖くなって、かぶりを振って店を後にした。

 

今は、ただ、落ち着こう・・

それだけを自分に言い聞かせ、エスカレーターを駆け下りた。

 

表に出ると、穏やかだった福井の空が、

山の方から暗くなって、俄かに風が強くなっていた。

今夜は嵐になるだろう。

兎に角、家に帰ろう。

それだけを考えるように、車に乗り込み、エンジンをかけた。

次回予告

足早に店を後にするちゃぼP。

その心は乱れに乱れ、冷静ではとてもいられない。

同時に例年になく穏やかだった福井の空が、俄かに暗くなって、とうとう嵐となる。

次回、やっとの思いで家にたどり着くちゃぼPの行動は・・?

急転直下のちゃぼPの心の葛藤に乞うご期待!!

【連載】俺の相棒(2)~出会いと別れ

それぞれの旅

人にはそれぞれ、居場所というものが必要だ。

そして誰かに必要とされること。

どれだけ経済的に満たされていようが、人が羨むような生活をしていようが、人に必要とされない生活は辛すぎる。

それはパソコンも同じことだ。

 

別れはいつも辛いものだが、新しい相棒を求める気持ちになってしまった以上、長年連れ添ったパソコンにはきちんと礼節を持ってお別れを言うことにしたかった。

私は勝手だ。

今から思えば、別れは新しい出会いの始まりとも言うし、お互い悪いことでもないはずと、半分自分自身に言い訳をしたかったのかもしれない。

 

私はこれまで進んできた道について改めて考えた。

人間にとって、パソコンというものは所詮道具でしかない。

道具そのものに意味があるわけではなく、それで何をやるかが重要だった。

 

ブログを始めてしまった今、私には、私の考えや行動に寄り添ってくれる新しい「相棒」が必要だ。

思ったこと、考えたことを、キーボードやマウスを通じて、遅滞なく受け入れ、表示してくれる道具。

それが私の望むものだったのだ。

いくつかの相棒候補

量販店の店頭や、ネット通販サイトで私は新しい相棒を探した。

最近では「パソコン」というものの定義があいまいになりつつある。

パソコンと言えば昔は「デスクトップ型」と「ノート型」から選ぶのが普通だった。

ところが、今はタブレットのような薄い端末にキーボードがくっついて、それでパソコンとほとんど同じことができたりするような時代になった。

 

これまで、私のそばには常にWindowsのパソコンがあった。

ネットサーフィンする時も、メールを書くときも、プログラムを作るときも、そこにはツーボタンマウスのパソコンがあった。

特に不満はなかったから、当然同じWindowsのパソコンを探した。

 

最初に手にしたのはWindowsのタブレット。

デザインも良く、タッチパネルで、おまけに衝撃的な安さだった。

 

だが、、

こいつは致命的に動きが遅い。

電源を入れて、しばらくはいい。

ところがしばらくすると極端に反応が返ってこなくなる。

まるで、糸の切れたマリオネットのように。

これには堪らず、お別れすることになった。

何事にも縁がなかったということはあるのだ。

 

そして、次に出会った相手は、MicrosoftのSurface3。

これは素晴らしかった。

意のままに反応するタッチパネル、薄くても丈夫でしっかりとタイピングを受け止めるキーボード。動きもキビキビ・・とまではいかないが、十分に使える本体性能。

そしてMVNOのSIMが使えてモバイルバッテリーでも充電できる!モバイル性能、最高だ!

やっと思い描いていた理想の相棒に巡り会えた。

心の底からそう思った。

 

そう、最初はそう思っていたのだ。

ところが、私はこの後、予想もつかない時の荒波に巻き込まれていくことになる。

この時点で、私はその事実に、まだ気づいていないのだった。

次回予告

動き出した時間の歯車は、Surface3という大きなターミナルでゆっくりと止まるかに見えた。

雪の舞う福井で静かに羽を畳むかに見えたちゃぼPに、突如猛烈な風が吹き付ける!

孤独な相棒探しの旅に風雲急を告げる!

次回、大波に翻弄されながらも、必死に抗うちゃぼPの姿に乞うご期待!!

【連載】俺の相棒(1)~福井の厳しい冬の大地で感じる予感

序章

福井の荒島岳から冷たい風が頬を突き抜ける。

わたしは広い平野に佇み、焦燥感に駆られた。

 

福井の冬は我慢の季節だ。

空は暗く淀み、時折陽が差したかと思うと、白いものがちらりほらりと舞い降りてくる。

冬でありながら稲妻が其処此処で光り、地元の人間は「雪がみなりがやってきた」と口々に言う。

夜は「ゴォー」という雄たけびのような強い風が家屋の間を走り回り、夜が更けると分厚い雪にすべてが覆われる。

 

私はもう、この地に10年暮らしている。

早いものだ。

住めば都とはよく言ったもので、そんな厳しい冬の景色ももはや日常となってしまった。

雪景色

ただ、この冬は、何かがいつもと違う気がする。

何が違うのかはわからない。

雪の色も、風の香りも、雷の響きも、いつもと変わらないはずだ。

ただ、何かがいつもと違う気がするのだ。

違和感の正体

最近、わたしはブログ執筆という新しい趣味をはじめた。

特に何かを主題として書いているわけではない。

その日思ったこと、伝えたいこと、考えたことを書きとめている。

 

やってみるといろいろな発見があって、面白い。

最初は続けるのは結構大変だと思っていたが、書くことというのは意外とあるものだ。

考えてみると、惰性で毎日を生きているような感じでいるが、実はそうでもないということに気づかされる。

 

毎日、何かを感じ、何かを考える。

その連続が日常というものなのだろう。

その日常をブログに綴り、それをきっかけに新しい出会いがあり、人の繋がりが生まれたりする。

だから余計、面白い。

 

だが、この焦燥感はなんだろう。

寝ても覚めても、いつまでも心が消化不良をおこしているかのように、ふわふわとしている。

嫌な気分だ。

 

そんな気持ちの中で、ふと目の前の古ぼけたWindows7のインストールされたパソコンに目を遣る。

長年、労苦を共にしたパソコンだ。

「君はいつまで俺の相棒でいてくれるのだ?」

わたしは彼に、そう問いかけた。

 

答えはなかった。

アンチグレアのちょっと暗めの画面が、まるですべてを遣り終えた老躯のように見えた。

「老兵は、ただ消え去るのみ」

画面の向こう側で、微笑みながら古い相棒が呟いた気がした。

次回予告

荒涼とした福井の冬の大地で、筆者ちゃぼPが新しい相棒を探し始める旅が始まる!

筆舌に尽くし難し、渾身のドキュメンタリー。

次回乞うご期待!!