【連載】燃ゆる夏(終)〜Close to You

最終章 遙かなる影

永遠のスタンダードナンバー、カーペンターズ。

今は亡き、カレンの歌う「Close to You」は、「あなたのそばに」という意味だ。

大好きなMacBook、大好きな音楽、そして大好きな写真。

愛する者達が、そばに居て欲しいと思うのは、私のエゴだろうか。

 

静やかな心の泉に一つだけ投げ入れられた小さな石。

それが波紋となって広がってゆくように、私の心に新しく「大好きなモノ」が滑りこむ。

 

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最初に投げ入れた小石が、水面に波紋を広げてゆくのだった。

 

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そこには紛れも無く、新しく我が家に迎え入れられた「愛すべきモノ」が居たのだった。

 

 

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キャノン「EOS 80D」。それは流礼なデザインで美しく、それでいてオトコっぽいカメラだ。

 

 

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赤いストラップが最新の叡智によって作られた80Dを主張する。

 

 

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まるで天を見上げて一人で被写体がやってくるのを待っているかのようだ。

 

 

こうして、私は晴れてキャノンのユーザーとなった。

 

 

このカメラで最初に撮影したフォトグラフは特別な日に撮影した。

 

 

EOS1st01

 

 

エビローグ

静かに80Dをデスクの上に置く。

このカメラで何を撮ろう。そして何を伝えよう。

私の好奇心は今日からそんな気持ちを新たにしたのだった。

 

Close to You.

あなたのそばに。

Canon EOS 80Dがそう私に話しかけてくれていると、信じよう。

 

あとがき。

これにて連載「燃ゆる夏」は完結である。

次回以降はこの80Dを使った写真をできるだけ多くお伝えしたい。

長い間、付き合っていただいて、ありがとう。そして、「あなたのそばに」居てくれる愛するモノが皆さんの手のひらに舞い降りることを、遠き福井の地より願って。

(完)

【連載】燃ゆる夏(4)〜分岐点

第四章 忍びよる足音

東京から約三時間半。

新幹線と在来特急を乗り継いで福井までたどり着くと時間はすでに9時を過ぎ、駅前の人通りもまばらになっていた。

駐車場に停めておいた車に荷物を積み込み、自宅へと帰還する。

本来なら落ち着くはずの我が家も、何か忙忙として落ち着かない。

 

原因はわかっている。

今日、店頭で触れたアイツだ。

あの、シャッターボタンを押した瞬間に合焦する衝撃的なオートフォーカスと、私の手にしっくりと馴染み、まるで音楽のように心地よいシャッター音を奏でるアイツ。

東京から戻ったばかりの愛機D5500を前に置き、これまでD5500で撮影してきた写真たちを眺めた。

 

昨年末に盛岡のブログ仲間「部長」から勧められて購入したNikon D5500は、約半年という短い時間のなかで、たくさんの瞬間を切り取ってきた。

冬の福井、打ち上がる花火、穏やかで広やかな海、そこで穫れる海の幸。

どれも貴重で美しく、素晴らしい瞬間ばかりだった。

 

思えば、ファインダーの小さな窓は、普段見えない世界を覗くための窓だったのかもしれない。

ある一点にのみ焦点が合い、四角く切り取られた世界は、普段意識することのない幾つもの表情で溢れている。

そんな「窓」の中に広がる風景を見た瞬間に、「この瞬間を記録したい」という気持ちが私を支配する。

 

ガジェットの写真もグルメの写真も、人や風景もすべてそんな気持ちのアウトプットでしかないのだ。

だから、とても小型で高性能なD5500で何の不満もなかったが、あの衝撃的な80Dの挙動は未来を感じさせるのに充分だった。

 

「あのカメラで、たくさんの瞬間を記録したい・・・」

福井に戻って普通に仕事をする每日に戻ってからというもの、日に日にその思いは募っていった。

 

D5500と共に来た道。

暑い夏の盛りに突然現れた道の分岐点が、今にも手の届きそうなところで陽炎に揺れている。

 

心のなかで踏ん切りをつけるようにして、私は決心した。

新しい、「窓」を覗くために。

次回予告

通常別のメーカーの一眼レフに乗り換えるということは、レンズもすべて刷新することを意味する。

だから、それほど簡単な話ではないはずだ。

だが、心の歯車に挟まったD5500への思いを振り切るようにして、一気呵成に事態は動く。

新たな出会いと別れを予感させる梅雨の終わり。

彼は新たな道を選択するのか?

ちゃぼPが出した答えとは?

蝉時雨舞う真夏に起きたノンフィクション「燃ゆる夏」の次回最終回に乞うご期待!

【連載】燃ゆる夏(3)〜心変わり

第三章 衝撃と動揺

一番奥の島は、見慣れた一眼レフのコーナーである。

昔から高級カメラといえば一眼レフだった。中学の頃に初めて一眼レフ機を手にしてから、思えばいろいろな場所に撮影しに行ったものだ。近所の公園、踏切で鉄道写真、小江戸川越の街並み。どれも懐かしい思い出だ。

そんな一眼レフも、成人してからしばらく遠ざかっていたが、ブログをキッカケに今ではニコンD5500を手にしてすっかりカメラ熱がぶり返しつつある。

 

ファインダーを覗いた時の「写真を撮るぞ!」という高揚感、オートフォーカスがピントを素早く合わせてミラーアップする、あのメカメカしいシャッター音。やっぱりこれらはデジタルになった現代でも、どれも一眼レフには敵わない。

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まず目に飛び込んできたのが、ボディーだけでも15万もする高級機。左の6Dはフルサイズ一眼というもので、センサーサイズが大きく、大きなポスターなどの写真を撮影するときに素晴らしい画質を発揮できるらしい。

右側の7D Mark2は、それより小さな「APS-C」というセンサーを搭載するが、このクラスでのキャノンのフラッグシップモデルで、秒間10コマの連続撮影が可能とのこと。

どちらも凄そうなカメラではあるが、自分の用途にはあまり適していないせいか、それほど興味が沸かない。「ああ、凄いカメラだな」と思いながらも、私はカメラを手にすることもなく素通りしてしまった。

 

ここで引き返せばよかった。そうすれば何事も無く私は福井に帰ることが出来たのだ。

運命の糸に引き寄せられるように、私が向かった先には、コイツがいた。

 

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EOS 80D。今年3月に発売された70Dの後継機だ。

70Dは部長も使っているカメラだ。外見上はあまり変わっているようには見えないが・・・

どれ、ちょっと触ってみようか。

 

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ん?D5500よりゴツいけど、なんかカッコいいぞ。

 

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!!!

なんて早いAFなんだ!

シャッターボタンを半押しした瞬間にピントが合っているじゃないか!

しかもシャッター音も「カチャッ」という感じで雑音が無く、すごく小気味いい。

しかもD5500のファインダーを覗いている時に思っていた、視野率の狭さ(D5500は95%)がコレでは100%。つまりファイダーに写っている画角そのまま写真で記録されるというではないか。

 

「マジか・・・」

 

私は一言そう呟き、カメラをショーケースに戻した。

D5500でも素晴らしい絵が撮れる。それは間違いない。間違いないが、この80Dでは、不満に思っていたことがすべて払拭されているように思えた。

 

これはいけない。

まるで何かから逃れるように雑沓の中に紛れ込み、駅へとまっしぐらに歩いた。

80Dへの未練のように、照りつける太陽が創りだす私の影が、後方へと伸びながら。

次回予告

ミラーレス機への興味は、思いもよらないEOS 80Dというキャノン一眼レフへのシフトし、それを触った瞬間にひどく動揺したちゃぼP。

果たしてD5500の運命は?そしてEOS 80Dへの思いは断ち切れるのか?

次回の「燃ゆる夏」は、福井に戻ったちゃぼPに襲いかかる運命の物語。

更新を静かに待て!

【連載】燃ゆる夏(2)〜ニコンとキャノンの間で

第二章 誘引作用

そこはちょっとした楽園であった。

私の大好きなカメラたちが、肩を寄せ合うようにして所狭しと並んでいる。

一番手前には流行のミラーレスカメラたち。それらはビックリするくらい小さく、それでいて一眼レフカメラと同じくらい素晴らしい写真が撮影できる。

電子ビューファインダーを覗きながら、私の心は大きく揺れ動く。

 

キャノン、ニコン、シグマ、パナソニック・・・

店頭で触っているだけでは操作感の違いくらいしか正直わからないが、ミラーレス一眼の大きさは正直いって大きな魅力だ。

そういえば部長スタッフ(というかプロデューサー)たけPは、デジタル一眼のEOS Kiss X7を売却して、ミラーレス一眼のEOS M3を購入したという。

http://nabi1080.com/camera/eos/55063

そしてプロカメラマンのカメ仙人。

http://nabi1080.com/camera/eos/54987

プロのカメラマンですら、M3を購入している。確かに、それくらいの魅力がこのカメラにはある。

私は一眼レフを買う前は、ずっとキャノンのコンパクトデジカメIXYシリーズを使っていた。だから、操作感はおそらくソレに近いし、他にもカシオとかパナソニックのコンデジも使ったが、いまいち操作感がしっくりこず、結局IXYに戻った記憶がある。

そんなカメラのミラーレス版だ。しかもチルト式の液晶モニタ、ストロボ内蔵、外付けにはなるが電子ビューファインダーにも対応している。

そして、キャノンのデジタル一眼用のレンズを持っていると、マウントアダプターというものを使えばレンズ資産はそのまま利用できるらしい。普通の使い方であれば、軽いカメラのほうが機動力に優れていることは明らかだ。

 

手元にあるレンズはそのままに、本体が小さくなって気軽に持っていけるようになる。これだけで買い換える価値はある。

私の心は再び大いに揺れた。ただ、冷静に考えると、ニコン党の私にはキャノンのEFマウントのレンズ資産はない。同じミラーレス一眼なら、「ニコン1」を購入するのが自然だ。

だが、私の所有するNikon D5500は、一眼レフでありながら驚くほど小型であり、ミラーレス程ではないが充分に軽量だ。

Nikon D5500を使って2ヶ月。軽い、コンパクトなデジタル一眼カメラの真実

そう考えると、小型で軽量なD5500から、同じニコンのニコン1に変更することは果たして賢明な選択なのか?

ニコン売り場に立たずんだ私は、しばし考えこんでしまった。

D5500と純正ニッコールレンズ、それと純正マクロ40mm。カメラは下取りに出すとしても、これらのレンズをニコン1に装着して持ち歩くのはちょっと現実的ではない気がした。あまりメリットが感じられないと思った。

 

もう一度キャノンコーナーに足を伸ばし、ミラーレスのM3を手にとって見る。

「わたしにもしキャノンのEFマウントのレンズがあったなら・・・」

私は静かにカメラを売り場に戻して、一つ向こうの島にあるコーナーに向かった。

 

そして・・・

 

そこには、私を待ち受けるためにデイスプレイされた、スターたちが待ち受けていたのである。

次回予告

ミラーレスカメラに大きく引き寄せられてゆくちゃぼP。

そこには驚くほど完成度の高い、コンパクトで魅力的なカメラが並んでいる。

ニコン党な私は、手元にあるD5500を肩にかけたまま、なかなか踏ん切りがつかず、他のいいアイデアも浮かばないまま、カメラコーナー一番奥に足を運んで衝撃の体験をすることになる。

次回の「燃ゆる夏」は、その体験が私の未来を大きく変えてゆくことになる物語になる。

更新を静かに待て!

【連載】燃ゆる夏(1)〜遠く離れた故郷で

序章

燦々と降り注ぐ夏の陽射しを避けるように歩く。

ここは東京杉並。私は母の三回忌の墓参に来ている。

昔、「思えば遠くへ来たもんだ」というフォークソングがあったけれど、時は止め処なく流れ、まるで子供の頃から見慣れた風景だけが置き去られているかのようだ。

私は供えの花と水桶を抱えて、寺の間貫通りを歩き、墓前に花を手向ける。

 

昼下がりの平和な風景と、昔を振り返るには充分な時間。

墓碑に向かって手を合わせ、静かに頭を垂れるだけで様々な思い出が頭のなかを駆け巡る。

ふと現実に戻り、踵を返した私は、元来た道を歩き始める。

 

「福井へ帰ろう」

 

2016年夏。ジリジリと刺すような陽射しを手土産に、このまま私は静かに東京を去るつもりだ。

遠くで幽かに轟く雷鳴が鳴っている。こんな暑い日はカミナリ雲が出来やすい。そんなことを考えながらぼんやりと歩き続ける。

それが嵐の前兆であるとも知らずに。

第一章 雑沓と喧騒

昨夜は気心知れた古い友人と食事をして随分と盛り上がった。

エビも美味しかったし、とにかく話が尽きない。話題も昔のまま。やっぱり古い友人というのはいいものだ。

Arrived at TOKYO. レッドロブスターの黄金焼きを食す

翌朝、朝ごはんを食べ、寺に出向き、法事と墓参を済ませたら福井に帰るはずだった。

旧友にも会えたし、福井ではなかなか食べられないものも頂いた。

 

だが、嫁さんがショッピングをしたいという。寺のある高円寺というところに近い繁華街といえば、吉祥寺だ。実は私の実家はこの吉祥寺だった。最近では「若者の住みたい街ランキング」の1位2位あたりに張り付いているほど人気の街。

昔はホント、下町っぽい雰囲気でオシャレな街とは無縁だったような気がするが、確かに駅前の様相も一変し、随分とオシャレになった。

私は特に買いたいものはないので、どうしようかな、と思っていたら、数年前に大きな電器店がオープンしていることに気づいた。

 

「暇つぶしになにか面白いものがないか覗いてみよう」

 

そんな軽い気持ちでそこから私は単独行。真新しい駅ビルを出ると、駅前は活気に溢れている。

そうか、今日は日曜日だ。喧騒と雑沓をすり抜けるようにして私は電器店に向かった。

 

 

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歩いて数分で到着したここも、すごい人で溢れている。

さて何を見ようか。1階はスマホコーナーで、エスカレーターを上った2階がカメラコーナー。そういえば私がNikon D5500を手にしてからもう半年が経過する。

ブログを始めてまさか一眼レフデジカメを手に写真を撮るなんてことになるとは思ってもみなかったが、それなりにいろいろな写真を撮影し、写真を撮ることの楽しさが日に日に増した。

 

最近じゃあ、ミラーレス一眼という、ファインダーを取り除いたちょっとコンパクトなカメラが人気。確かに一眼レフカメラは大きいし重い。常に持ち歩くにはちょっと躊躇うサイズだ。

D5500も一眼レフカメラの中では最軽量クラスだと思うが、ミラーレスはどんな感じだろう。

そんなことを漠然と考えながら、エスカレーターを外れて2階の売り場へと進んでいくのだった。

次回予告

真夏に郷里へ帰省したちゃぼPが向かった先は、大きな電器店。

すっかり写真を撮ることに魅了され、たくさんのカメラが並ぶ売り場へと誘われるように消えてゆくちゃぼP。

騒々しい店内に於いて、静かに何かが動き始める気配がそこにはあった。

次回、ちゃぼPが居並ぶ錚々たるカメラたちに翻弄されてゆくことになる。

新連載シリーズ「燃ゆる夏」の更新を静かに待て!