とある、会社の中での出来事。
ちゃぼP、業務後に休憩ルームでコーヒーを飲んでいました。
すると同僚のT氏が目の前に座り、ご自身で使っておられるEXPERIAを眺めながら難しい顔をしています。
ちゃぼP「どうしたの?」
T氏「なんか最近調子悪いんだよねー、このケータイ」
ちゃぼP「どう調子悪いの?」
T氏「フリーズが多くて、電源も切れなくなるのよ」
うーむ。ちゃぼPもiPhone 4sを持つ前は、Android持ちだったから、そのストレスはよく知っております。
昔私が持っていたAndroidもフリーズばかりで、いざ電話をかけようとすればフリーズするし、もうその時点でストレスMAX。
たまらず、ガラケーと2台持ちという暴挙に出た記憶が・・・
でもそれにしたって、あれから何年も経つし、だいぶ改善されているんじゃないの?
そう思って、素直に質問をぶつけてみた。
ちゃぼP「そんなに今でもフリーズするの?」
T氏「もう2年近く使っているからねえ。古いから仕方ないよ」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
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一枚の写真
ちゃぼP「そうなの。あのさ、ちょっとこれを見て欲しいんだけど」
そう言って、私は一枚の写真を見せた。
T氏「・・・なに、これ・・・」
ちゃぼP「ん?iPhoneだよ?」
T氏はキョトンとしている。
T氏「いや、それはわかるけど・・・この下のは・・」
ちゃぼP「ああ、同じ色のパソコンだよ」
敢えて、「MacBook」の名前はまだ出さないのである。
T氏「これ、いいね・・・」
ちゃぼP「そうかなぁ。普通のパソコンだよ。Appleだから、MacBookになっちゃうけどね」
私は、彼が長年Windowsを使ってきたことを知っている。
T氏「いいなあ・・これ」
ちゃぼP「そう?それよりさ、スマホ、iPhoneにしたら?ちょうど、今iPhone SEが出たばかりだし、SIMフリーもあるよ」
そう言って、2枚目の写真を見せる。
ちゃぼP「これはiPhone6だけどね。画面はRetinaだから、綺麗だよ」
T氏「あ、ああ・・うん。そう・・だね・・」
T氏は目が泳いでいる。
次の言葉
ちゃぼPは既に次の写真を用意して、彼の次の言葉を待っている。
T氏「MacBookの写真はないの?」
ちゃぼP「ん?ああ、あるよ。確か・・・」
私は用意していた写真を探すふりをしてから、彼にiPhoneの画面で見せる。
T氏「キ、キレイだ・・これは?」
ちゃぼP「これはMacBookの画面を撮影したものだよ」
T氏「・・・そうなんだ・・・」
そして、たたみかけるように、私は次々とMacBookの写真を見せ続けた。
ここまで見せて、すっかり黙りこくっていた彼は、
「MacBookか・・」
とつぶやいて、帰り支度を始めた。
ちゃぼP「iPhoneなら、MacBookとの相性もバッチリだし、この機会にパソコンも入れ替えるのもアリかもね」
T氏「ん?ああ、そう・・かもしれないね・・」
エピローグ
彼は、会社を出て、何故か家とは反対側の方向に向かって歩き出した。
私はそれを見送りながら、彼の進む先に、家電量販店があることに気づいた。
春の桜が満開を過ぎ、花吹雪が舞う今、おそらく彼の心も春の風が吹いている。
出会いは突然の風の中。
彼の心に突然訪れた出会いは、余韻だけを残して静かに夜の福井の街に消えていったのだった。
(完)
※この物語はフィクションです。実在の人物とは関係は一切ございませんので、ご了承ください。