第三章 衝撃と動揺
一番奥の島は、見慣れた一眼レフのコーナーである。
昔から高級カメラといえば一眼レフだった。中学の頃に初めて一眼レフ機を手にしてから、思えばいろいろな場所に撮影しに行ったものだ。近所の公園、踏切で鉄道写真、小江戸川越の街並み。どれも懐かしい思い出だ。
そんな一眼レフも、成人してからしばらく遠ざかっていたが、ブログをキッカケに今ではニコンD5500を手にしてすっかりカメラ熱がぶり返しつつある。
ファインダーを覗いた時の「写真を撮るぞ!」という高揚感、オートフォーカスがピントを素早く合わせてミラーアップする、あのメカメカしいシャッター音。やっぱりこれらはデジタルになった現代でも、どれも一眼レフには敵わない。
まず目に飛び込んできたのが、ボディーだけでも15万もする高級機。左の6Dはフルサイズ一眼というもので、センサーサイズが大きく、大きなポスターなどの写真を撮影するときに素晴らしい画質を発揮できるらしい。
右側の7D Mark2は、それより小さな「APS-C」というセンサーを搭載するが、このクラスでのキャノンのフラッグシップモデルで、秒間10コマの連続撮影が可能とのこと。
どちらも凄そうなカメラではあるが、自分の用途にはあまり適していないせいか、それほど興味が沸かない。「ああ、凄いカメラだな」と思いながらも、私はカメラを手にすることもなく素通りしてしまった。
ここで引き返せばよかった。そうすれば何事も無く私は福井に帰ることが出来たのだ。
運命の糸に引き寄せられるように、私が向かった先には、コイツがいた。
EOS 80D。今年3月に発売された70Dの後継機だ。
70Dは部長も使っているカメラだ。外見上はあまり変わっているようには見えないが・・・
どれ、ちょっと触ってみようか。
ん?D5500よりゴツいけど、なんかカッコいいぞ。
!!!
なんて早いAFなんだ!
シャッターボタンを半押しした瞬間にピントが合っているじゃないか!
しかもシャッター音も「カチャッ」という感じで雑音が無く、すごく小気味いい。
しかもD5500のファインダーを覗いている時に思っていた、視野率の狭さ(D5500は95%)がコレでは100%。つまりファイダーに写っている画角そのまま写真で記録されるというではないか。
「マジか・・・」
私は一言そう呟き、カメラをショーケースに戻した。
D5500でも素晴らしい絵が撮れる。それは間違いない。間違いないが、この80Dでは、不満に思っていたことがすべて払拭されているように思えた。
これはいけない。
まるで何かから逃れるように雑沓の中に紛れ込み、駅へとまっしぐらに歩いた。
80Dへの未練のように、照りつける太陽が創りだす私の影が、後方へと伸びながら。
次回予告
ミラーレス機への興味は、思いもよらないEOS 80Dというキャノン一眼レフへのシフトし、それを触った瞬間にひどく動揺したちゃぼP。
果たしてD5500の運命は?そしてEOS 80Dへの思いは断ち切れるのか?
次回の「燃ゆる夏」は、福井に戻ったちゃぼPに襲いかかる運命の物語。
更新を静かに待て!